大量生産と高精度ポリマー光学部品向けのプラスチック金型工具鋼の選択
ポリマー光学部品は、現代のハイテク機器に不可欠なものであり、その需要は着実に増えています。この需要の拡大を牽引する主要市場には、自動車産業、センサー、情報技術、医療用途などがあり、軽量かつ高性能なソリューションによって大きな経済的メリットをもたらします。精密ポリマー光学部品を使うことでメリットがある製品の例としては、ヘッドアップ ディスプレイ (HUD)、ヘッドマウント ディスプレイ (HMD)、AR および VR 装置の光学部品、カメラレンズ、医療機器の透明ポリマー部品などがあります。
金型用工具鋼の選択は、金型の表面仕上げ、寸法安定性、寿命に大きく影響します。光学グレードの部品の場合、鏡面仕上げと高い寸法安定性を実現するには、金型材料の磨き性が極めて重要です。さらに、腐食性のポリマーを使う場合は、耐食性に優れた工具鋼を使用し、金型の劣化を防ぎ、安定した生産を実現できるようにすることが重要です。
長期間の製造工程で精度を維持するには、磨き性だけでなく高い耐摩耗性が重要です。大量生産の場合は、寸法精度を損なうことなく、射出成形の際にかかる繰返し応力に耐えられる工具鋼が必要です。耐摩耗性の高い工具鋼は、一貫した生産を保証するだけでなく、補修コストを最小限に抑え、最終的なポリマー部品の複雑な表面パターンと細かいディテールの完全性を維持できます。
高精度ポリマー光学部品に適した工具鋼を選択することは、表面仕上げ、耐久性、コスト効率のバランスのとれた部品の製造に不可欠です。最適な工具鋼を慎重に選択することで、メーカーはさまざまな業界で拡大する高度な光学製品に対する需要に対応し、大量生産と高精度の用途で最適な性能と信頼性を確保できます。
ASSAB は、表面仕上げと大量生産に求められる厳しい要件を満たすために、Tyrax ESR や Unimax などのマトリックス系工具鋼を推奨しています。Tyrax ESR と Unimax の使用硬度はどちらも 54 ~ 56 HRC で、金型寿命が大幅に延びます。特殊な合金設計により、一次炭化物のほとんどを除去し、炭化物のサイズを小さくできるため、高い磨き性が得られます。Tyrax ESR は、クロムを多く含有する、耐食性鋼種です。Unimax は、優れた靭性を備えた 5% Cr 鋼です。
化学組成:
C | Si | Mn | Cr | Mo | V | N | |
Tyrax ESR | 0.4 | 0.2 | 0.5 | 12.0 | 2.3 | 0.5 | + |
Unimax | 0.5 | 0.2 | 0.5 | 5.0 | 2.3 | 0.5 | – |
プラスチック成形における Tyrax ESR と Unimax の特性:
鋼種 | 特性 | 長所 | |
Tyrax | Unimax | 高硬度 (推奨 54-56 HRC) | 金型の長寿命、補修コストの低減、寸法安定性 |
高強度 | 変形に対する耐性 | ||
良好な靭性 | 複雑な金型設計に対応 | ||
高い軟化抵抗 | 高融点のポリマーの成形に最適 | ||
優れた磨き性 | 鏡面仕上げを達成できる | ||
耐食性 | 冷却回路の腐食対策、腐食性ポリマー・HFFR・バイオ複合材料の成形に最適 |